【経営コンサルタントが使うフレームワーク】~真実の瞬間(Moments of Truth)~

こんにちは。
「真実の瞬間(Moments of Truth)」について書いていきたいと思います。
・「真実の瞬間」が大切だってミーティングで言われたけど、「真実の瞬間」ってなに?
・新しい業務を考える時に「真実の瞬間」ってどうやって活用するの?
ということをもう少し詳しく知りたい人は必見です!

コンサルティングの活動のテーマとして、「お客様サービス品質の向上」とか「おもてなしの接客力の向上」といったテーマがよくあります。

CRM(Customer Relationship Management)の領域でのコンサルティングのテーマです。

言葉で書くと非常に簡単ですが、「お客様サービス品質の向上」や「おもてなしの接客力の向上」を実現する新しい業務のあり方を考えて、従業員の方一人ひとりの働き方を変えて、新しい働き方を実行していくことは簡単なことではありません。

しかし、お客様の最前線での接点を担当する従業員の方の働き方は、お客様の満足度や企業ブランド、企業業績にも大きな影響を与えます。

そこでの重要な考え方の一つが「真実の瞬間」です。

今回は「真実の瞬間(Moments of Truth)」について紹介してきたいと思います。

※CRMについてもう少し知りたい方はいかの記事も是非読んでみて下さい

経営コンサルの必読書厳選9選!【CRM編】 

1.「真実の瞬間」って何?

「真実の瞬間」という言葉使われたのは、ヤン・カールソンさんが書かれた『真実の瞬間-SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』でした。

英語では「Moments of Truth」です。
(時々単数形の表記を見かけますが、複数形が正解です)

著者のカールソンさんは、1981年にスカンジナビア航空のCEOに就任されました。

それまで、赤字経営で苦しんでいたスカンジナビア航空をわずか1年で再建されました。

その時に重要な考え方として提唱されたのが「真実の瞬間」です。

カールソンさんが提唱した「真実の瞬間」とは、スカンジナビア航空を利用するお客様がサービススタッフとかかわる最初の接点での15秒間を指しています。

この15秒間でのお客様とスタッフとの接点がお客様の満足度を大きく左右すると考え、その強化に取り組みました。

この「真実の瞬間」は、決してサービス業だけに適用されるものではありません。

店頭で商品を手にする瞬間とか、通販であればモノが手元に届いて開封した瞬間とかです。

その「真実の瞬間」で「あれ?」とか「おや?」というように、お客様の期待と違う思いを持たせてしまうと、製品を購入される確率は非常に低くなると言われています。

2.「真実の瞬間」は実践されているの?

「真実の瞬間」を大切にしている企業は結構あります。

グローバル企業だとP&Gとかが有名です。

また、日本企業で有名な企業に星野リゾートがあります。

星野リゾートは、経営の苦しくなった全国の旅館等リゾート施設の運営を見直し、多くの施設の再生に成功しています。

そこで重要としているのが、「真実の瞬間」です。

お客様との「真実の瞬間」を最良のものとするために、対応するスタッフに考えさせ、判断させています。

ただ、闇雲に考えても意味ある結果に繋がりません。

そのために「CRMキッチン」というお客様情報システムを整備しました。

「CRMキッチン」には、お客様情報が集約されています。

この情報でスタッフの的確な判断をサポートし、最良の「真実の瞬間」を実現しています。

「星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則」に詳しく書いてありますので、是非読んで下さい。

3.「真実の瞬間」はどう活用するの?

では、この「真実の瞬間」をどう実現していけば良いのでしょうか。

重要な2つの考え方があります。

  • アウトサイド・イン・ビューで考える
  • MOTを起点に考える

アウトサイド・イン・ビューで考える

クライアントの企業でお客様視点を大切にしたいという相談があってお話をお聞きすると、確かにどの企業もお客様視点を重視しているものの、社内の業務自体はあまりお客様を向いているとは言えないことが多いです。

そこで、重要な視点として、企業の価値をお客様視点で考える「アウトサイド・イン・ビュー(Outside-In-View)」の視点です。

図 アウトサイド・イン・ビューの考え方のイメージ

<図 アウトサイド・イン・ビューの考え方のイメージ>

お客様の真実の声は何か、お客様が求めている提供価値何かを考えたうえで、あるべき「顧客と企業の接点」の在り方を検討します。

あるべき「顧客と企業の接点」を支える能力としてどのような能力が必要か、それを実現する仕組みや基盤はどのようなものが必要かとブレークダウンして検討することが重要です。

MOTを起点に考える

また、具体的な業務の流れや手順を考える際に業務プロセスを設計します。

その際に必ず意識しなけれならないことがMOT(Moments of Truth)やLOV(Line of Visibility)です。

業務の起点は常に最上のお客様となり、お客様と企業の間にあるのがMOTもしくはLOVです。

お客様からのインプット(依頼等)に対していかにMOTの下側の社内の業務プロセスを効率化し、お客様へのアウトプット(回答等)につなげるかという視点で業務を設計する考え方です。

放っておくと、自社の都合で業務プロセスを書き始めることが多いのですが、常にお客様を起点にMOT/LOVを意識して業務プロセスを設計することが重要です。

図 MOT/LOVを起点として業務プロセス設計のイメージ

<図 MOT/LOVを起点として業務プロセス設計のイメージ>

4.まとめ

「真実の瞬間」でのお客様満足度の向上は、当然のことながらお客様のロイヤルティの向上につながります。

お客様ロイヤルティの向上は顧客獲得コスト等顧客管理コストの低減やプレミアム価格での購入等売上はもとより営業利益率の向上につながります。

また、お客様満足度と従業員満足度は相関関係にあり、その関係を「サティスファクションミラー」と言います。

お客様満足度と従業員満足度の相乗効果が期待できます。

単にお客様と設定する15秒ですが、とても重要な「瞬間」です。