【KOPT】とは?基礎知識とフレームワーク活用法

こんにちは。
「KOPTモデル」について書いていきたいと思います。 
・KOPTモデルってどんなフレームワークなの?
・KOPTモデルってどうやって使うの?

ということをもう少し詳しく知りたい人は必見です!

経営コンサルタントがコンサルティング活動の対象とするのは、言うまでもなく企業ですよね?

「企業」と一口に言っても色々なものから成り立っています。

多くの社員の方が働き、組織に所属して、様々な業務を行っています。

現在の企業経営には業務を運営するために情報システムは欠かすことができません。

ただ、私たちがお伺いする企業の中には、大きな企業だと事業本部だけでも2桁の数の組織があったり、従業員数が1万人・2万人という企業も多くあります。

そのような巨大で複雑な企業を細部から全てを把握することは非常に困難です。

そこで私たち経営コンサルタントが

  • 新規事業を考える
  • 事業の課題分析を行う

ときに使用するフレームワークの一つが「KOPTモデル」です。

今回は、「KOPTモデル」についてご紹介していきたいと思います。

1.SCNとKOPTモデルの関係性

企業の戦略や新しいビジネスモデルを考える際に色々な手法が紹介されていると思います。

最近だと、ビジネスモデルキャンバス等は書店でも結構色々な種類の本が平積みされていますよね?

ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルを可視化するための手軽なツールのこと。

そのような事業戦略やビジネスモデルを検討する手法の中で、IBMのワトソン研究所で開発されたというSCNという手法があります。

経営課題の解決や新しいビジネスモデルを検討するためのフレームワークです。

英語のStrategic Capability Networkの頭文字をとったものです。

事業の目的の実現を「提供価値」(Value Proposition)と捉えて、この価値創出に必要となる「企業の能力」(Capability)を定義し、その「企業の能力」を成立させるために必要となる「実現手段」(Enabler)を定義します。

この「提供価値」の実現に必要となる「企業の能力」と「実現手段」を洗い出し、その構造と関係性を図で表現したものがSCNです。

<図 SCN(Strategic Capability Network)のイメージ図>

今回紹介する「KOPTモデル」は、このSCNの中の「実現手段」(Enabler;イネーブラー)を構成する要素です。

2.KOPTモデルとは?

KOPTとは、企業活動の主要な構成要素である4つの要素の頭文字をとったものです。

K:Knowledge(知的資産、人的ノウハウ・スキルなど)
O:Organization(組織、役割などの他広く人材や企業文化など含める)
P:Process(業務プロセス)
T:Technology(情報システムやデジタル技術をはじめとする技術的な要素)

経営コンサルタントが、

  • 新規事業を考える
  • 事業の課題分析を行う

には、もっと複雑で様々な要素が必要だと思われていたかもしれませんが、大きくは実現手段として定義するのはこの4つの要素と思っていただければ大丈夫です。

MEMO
ここでは割愛しますが、この4要素に加えて、「お客様」と「商品/サービス」の要素を加えて6つの要素で分析するフレームワークもあります。

詳しくKOPTについて見ていきたいと思います。

Knowledge

企業の活動を行う上で、知的資産や人的なノウハウやスキルといったものは欠かすことができません。

私たち経営コンサルタントの仕事をする上で、この知的資産などは極めて重要な要素となります。

一人の経営コンサルタントが一生涯でできるコンサルティングの案件の数には当然限りがあります。

現場で具体的に中身を見れる案件の数は2桁を上回らないと思います。

しかし、コンサルティングファームで、多くのコンサルタントが担当した案件のナレッジが溜まっていくとそれがコンサルティングファームにとっての武器となります。

これは一般の企業についても同じことが言えると思います。

一番わかりやすいのが特許でしょうか。

知財戦略ということで、中国、米国、日本など特許数を競っています。

社の知的資産を蓄積するとともに保護することは重要ですよね。

Organization

読んで字のごとく、組織の要素です。

しかし、私たちがコンサルティングの仕事で事業戦略などを検討する時は、なるべく組織の要素は入れずに検討する場合がほとんどです。

「組織は重要なのになぜ?」と思われますよね?

組織が重要だから、あえて入れないのです。

人はどうしても自分が所属する組織や他の組織のことから離れることがどうしてもできません。

よって、新しい事業などの検討を行うときに、現状の組織の状況や思いに引っ張られてしまいがちです。

すると、本当の意味でのあるべき姿の検討ができない場合もあります。

時々、「組織の利益の代弁者」というような言葉を使ったりします。

全社的な組織横断の取り組みのクロスファンクショナルチーム(CFT)等では、様々な組織からプロジェクトのメンバーが参加します。

しかし、ともすると、プロジェクトとしての目的達成ではなく、自分の所属する組織の利益のため、もしくは不利益を被らないための視点での議論が増えてしまったりします。

このような組織の利益の代弁者のような人がいると、現在の組織の理由に引きずられなかなか目指すべき姿に向けた検討が上手く進みません。

そこで、

  • 組織機能
  • 機能・役割・責任

等というような言い方をして、現状の物理的な組織から切り離して、論理的な機能の集合として議論することが重要になります。

Process

プロセスもしくは業務プロセスは企業にとって最も重要な要素の一つです。

企業において、仕入れしたものや原材料を加工・組み立てたり、サービス業だと競争力の源泉である社員がお客様への付加価値サービスを提供したりしますよね?

つまり、お客様に提供する価値をつくる過程であるプロセスにこそ、企業にとっての「価値の源泉」があるといっても過言ではありません。

例えば、個々の社員が創意工夫を凝らして、毎回毎回違う手順・工程でモノづくりをしていたらどうでしょう?

極端な例ではありますが、品質や生産性は担保されないですよね?

つまり、企業として業務プロセスがきちんと定義され、そこから差別化された商品やサービスが生まれていく過程にこそ差別化の源泉があります。

CMMI(Capability Maturity Model Integration)という、組織のプロセス改善を行う能力を評価する手法および指標があります。

この最高レベル5では、組織内で継続的にプロセスの改善に取り組む体制が整備されている、常にプロセスが最適化されている状態と定義しています。

当然プロセスがきちんと定義され最適化されていれば、人が変わっても出てくるアウトプットは同じになりますよね。

こういう観点から、企業にとってプロセスとは非常に重要な要素と言えます。

Technology

企業経営にとって必要となる技術的要素を指します。

製造業のお客様だと、モノづくりの生産ラインも技術の塊ですし、その製品開発で使われているようなCADなどのシステムも技術的な要素と言えます。

例えば、銀行など金融サービスでは、事業の根幹を左右するものが情報システムで、これも最新のITの塊です。

メガバンクが、事業の根幹を支える情報システムの構築・統合に数千億円の投資をすることは避けて通れないものです。

昨今ですと、DX(デジタルトランスフォーメーション)に代表されるように、デジタル技術を活用した新しい事業の創出や業務の構造改革などがマスコミなどでも話題になっていると思います。

SAPなどのERP(英語のEnterprise Resources Planningの略)パッケージの活用や、身近なものですとRPA(Robotic Process Automationの略)による業務(パソコン操作)の自動化などがありますし、5GやIoTを活用したビジネスモデル等も話題になっています。

もはや、現代の企業経営にテクノロジーの要素を抜きに語ることはできません。

※RPAについては以下の記事を参考にしてください

http://mub.co.jp/marketing/whats-rpa1/

3.KOPTモデルの使い方

このような「KOPTモデル」をどのように使うかですが、色々な場面で応用が利くフレームワークです。

大きくは以下の2つのシーンがあげられると思います。

・事業戦略を検討する
・現状調査・分析をする

2つのシーンについて詳しくみていきましょう。

事業戦略を検討する

冒頭でSCNを紹介しましたが、新しい事業のビジネスモデルを検討する際の要素として、その事業を実現するための手段を検討・定義するために使います。

単に、ビジネスモデルとして定義するだけでなく、個々の要素を深堀していくことにつながります。

個々の検討要素は、

  • 組織やプロセス
  • 情報システム

などの構築にもつながり、最終的には新しい業務のあるべき姿に変革していく移行計画(Transition Plan)やチェンジマネジメント(Change Management)にもつながっていきます。

このような点でも非常に重要な役割をするフレームワークです。

現状調査・分析をする

企業全体の様々な仕組みを一緒くたに把握しても意味ある結果ができません。

まずは、このKOPTのような要素に分解し、更にその内容を段階的に詳細化して内容を把握するような手順をとることが必要となります。

  • 情報を収集する
  • 収集した現在の状況を分析し課題を整理する
  • 課題からその原因を分析して整理する

すべての際に常にKOPTの要素を意識していくことが重要となります。

このようなフレームワークを無視して整理して行っても、果たしてどこに原因があり、どのような施策を打てばよいか論理的に検討・整理することは困難です。

4.まとめ

このように「KOPTモデル」は非常にシンプルなフレームワークではありますが、私たち経営コンサルタントが必ず押さえておかねばならない基本的な要素が整理されたものです。

企業の課題等は非常に複雑でいろいろな要素が絡み合っています。

その絡み合ったものを、シンプルな要素に分解していき、課題の構造や課題の原因を特定することは、経営コンサルタントにとって非常に重要なスキルです。

皆さんが社内の問題などを議論するような場面でも、この「KOPTモデル」を使って問題を整理していくと、見えなかった問題の原因も紐解けると思います。

今回少し触れた「ビジネスモデルキャンバス」もビジネスモデルを創出するためのフレームワークとしてとても注目を集めています。

最近は「ビジネスモデルキャンバス」に関する本も本屋で色々見かけますが、まずは以下の本から読むことをお勧めします。

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

また、記事で紹介したCMMIもプロセスという観点では非常に重要な考え方です。

もう少し詳しく知りたい人は、以下の本も参考に読んでみることをお勧めします。

CMMIモデルではじめるプロセス改善実践ガイド