「ECRS」について書いていきたいと思います。
・今日のミーティングでイクルスって聞いたけど、どう活用するの?
企業内の業務の効率化や自動化により業務処理にかかる工数やコストを削減するといったプロジェクトは、業務構造改革や業務プロセス変革と言って経営コンサルタントとして、よく担当する案件です。
しかし、業務の見直しですが、それほど簡単には見直すことができません。
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もちろん、法律や規制等のルールに従う必要があるところを変えるわけにはいきません。
また、大口のお客様や取引先等お客様のサービス品質を落としてしまうと、ビジネスに大きな影響が出る部分も中々大きく見直すことが難しい部分です。
一方で、あまり理由はないけれど前任者から引き継がれた業務なので、大きく変えずに行っている業務も多くあります。
担当している社員の人も「もう少し効率的なやり方あるけどな・・・」って思いつつも、あえて積極的に見直しなどしていないことも少なくありません。
そういうものが溜まっていくと、業務の効率が段々と低下していきます。
そのため、業務の「断捨離」が必要になってきます。
業務の「断捨離」を行う際に活用できるのが「ECRS」です。
今回は「ECRS」について紹介してきたいと思います。
コンテンツ
1.ECRSとは?
「ECRS」とは「イクルス」と読みます。
以下の4つの英単語の頭字語です。
- E:Eliminate(排除する)
- C:Combine(組み合わせる)
- R:Rearrange(再配置する)
- S:Simplify(簡素化する)
この4つについて詳細をみていきましょう。
E:Eliminate(排除する)
今行っている業務の一部もしくは全部をやめたり、省いたりすることを検討します。
例えば、作らなくても良い報告書を作成してたり、形式的な会議を行っていたりしますよね。
そういうものを思い切ってやめることを検討します。
C:Combine(組み合わせる)
これまでは別々に行っていたものを、組み合わせて一つにしたり、統合したり、集中したりするようなことを検討します。
例えば、小売りの店舗で集計業務をしていた場合、POSでデータが登録されているのであれば、各店舗でやっている集計作業を本部に集約してデータ処理を行うようなことです。
POSはPoint of Salesで、販売時点情報管理と言って、コンビニやスーパーの店頭のPOSレジを使って、販売情報をリアルタイムで管理できるようにするシステムを指します。
R:Rearrange(再配置する)
業務や業務を行う人や役割や手段等を置き換えたり、再配置したりすることです。
例えば、これまで社員が引き継いできた事務作業を、事務作業専門のアウトソーサーに委託し、社員を置き換える等でコストを削減することができます。
また、従来は社員が大きな会議室に集まって行っていた定例の打ち合わせをWebを活用したミーティングに置き換えたりすることです。
Microsoft のTeamsやZoom等Webでの会議を支援するサービスが便利に使えるようになっています。
S:Simplify(簡素化する)
文字通り、業務や手順を簡素化することです。
従来からのやり方を踏襲して、色々な部署で同じような数字等を個々にチェックしているようなことがあります。
Aの部署で作成した資料をBの部署で再入力して、さらにCの部署で情報を付加して作り直すということを行っている会社も少なくありません。
それぞれの部署で確認したという責任者の印鑑が重要なので、一度入力したデータを再利用せず、ハンコが押された紙の資料から何度も再入力をしていたりします。
時間の無駄ですよね。
こういった手順を簡素化するのです。
印鑑の文化をEliminate(排除する)すれば可能になります。
2.ECRSの使い方
ECRSを使い業務の改善施策を検討するのですが、いきなり改善施策を検討するのではなく、以下のような手順をとります。
- 現状の業務を棚卸する
- 現状の業務を分析する
- 業務の改善案を立案する
- 新しい業務を試行する
この4つについて詳細をみていきましょう。
現状の業務を棚卸する
自分の組織の業務を棚卸するところから始めます。
既に業務の一覧表等があるようでしたら、一覧が最新か、抜け漏れが無いか等をチェックします。
一覧表が無いようなら、一覧表を作成するところから始めます。
一覧表のテンプレートを作って、どのような業務を実施しているか書き出してもらいます。
現状の業務を分析する
業務一覧をもとに、業務マニュアルや業務フローを集めます。
また、業務マニュアルや業務フロー等が無い場合は簡単なメモ書きでも結構です。
どんな業務を行っているか書き出すようにします。
その際に気を付けることは以下の5つです。
- 前に処理している人や組織は何か
- 処理の前提となる情報は何か
- どのような手順で処理するか
- 処理した結果の情報は何か
- 次に処理する人や組織は何か
その上で、一覧表の業務と業務の関係や繋がりを考慮しながら、業務の問題点の洗い出しを行います。
その際に、利用するのが「業務課題分析の着眼点」です。
- 価値を生まない業務はないか?
- 重複した処理はないか?
- 処理方法は標準化/ルール化されているか?
- 紙による業務処理、情報伝達はないか?
- 処理が細分化/複数担当者化されていないか?
このような観点から現在の業務のやり方を確認して、何が課題かを整理していきます。
業務の改善案を立案する
業務を分析して、業務の問題点を洗い出せたら、業務の改善案を立案します。
発見された業務課題に対して、どのような解決策をとるべきかを考えていきます。
その際に、「ECRS」を使います。
課題に対して、「ECRS」の4つの視点で、どのように課題を解決していくかを検討します。
検討した結果の新しい業務のやり方は簡単でも結構です。
必ず、業務フロー等で可視化して、新しい業務のやり方で業務課題が解決するかどうかを確認するようにしてください。
新しい業務を試行する
その上で新しい業務のやり方を試行して、評価します。
実際の業務で試すことで、机上の検討では分からなかった問題を見つけることができます。
見直しを行い、上手くいくことが確認出来たら、業務マニュアルを作成したり、関係部署に連絡をして、新しいやり方での業務の本格使用を開始します。
3.業務課題分析の着眼点
先ほど紹介した「業務課題分析の着眼点」についてもう少し詳しく紹介したいと思います。
棚卸した業務を分析する際に、「業務課題分析の着眼点」をもとに改善すべき課題を洗い出しを行います。
- 価値を生まない業務はないか?
-転記や配布するのみ処理の前後でデータが変化しない
-保管することが目的で後で利活用しない資料を作成している - 重複した処理はないか?
-複数部門で同一/類似の処理を行っている
-確認/チェック/承認が複数部門で行われている
-同一書類/伝票を複数部門で保管している - 処理方法は標準化/ルール化されているか?
-同一の処理を別の方法で行っている
-同一の処理を別の判断基準で行っている
-担当者によって違う手順/判断基準で行っている - 紙やハンコ、現金等現物による業務の処理はないか?
-帳票の受渡しで業務が行なわれている
-コピー、FAX、郵送が多い
-システム入力のために伝票を作成している - 処理が細分化/複数担当者化されていないか?
-細分化された業務が担当者間を渡り歩く
-一連の処理が複数部門を渡り歩く
-データ発生部門以外で突き合わせ、チェックを行っている
前任の担当者から引き継いだ業務等を特に変えずにそのまま業務を行っていることは多いと思います。
そういう意味でも自分の担当業務以外でも「業務課題分析の着眼点」で見てみると無駄なことをやっている人が多いことに気が付かれるのではないかと思います。
4.まとめ
最近では、R:Rearrange(再配置する)する際の有力な方法として、ロボットに事務作業を任せて代行してもらうことで、大幅に業務を効率化できる方法があります。
ご存じの方も多いと思いますが、RPA(Robotic Process Automation)というソフトウェアのツールを導入することで、人が行うパソコンの操作を自動化することができます。
以前は、システム化が困難で手作業やEXCEL等を駆使して行っていた集計や分析作業など人がパソコンで操作している手順を比較的簡単に自動化することが可能になってきています。
先ほどの着眼点から見出されたポイントの見直しを行う際に、併せてRPAによる自動化を検討します。
手順や判断のルールが決まっていれば、現在人が行っているパソコン操作を自動化することができるようになります。
人がやっている作業をロボットでRearrange(置き換える)のです。
このようなツールを活用することも視野に入れて業務の効率化を検討すると、非常に大きな効果を生むことが可能になります。
※RPAに関しては、RPAシリーズの記事を是非読んでみて下さい
業務改善について興味を持たれた方は以下の本も読んでみて下さい。
「業務改革の教科書--成功率9割のプロが教える全ノウハウ (日本経済新聞出版) 」