「能力成熟度モデル」について書いていきたいと思います。
・CMMIはシステムの能力の評価みたいだけど、営業や生産とか他の業務にも使えるの?
コンサルティングの仕事をしていて重要なことに、
- 物事を構造的にとらえる
- 定義を明確にする
- 判断の基準を明確にする
ということがあります。
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例えば、全社の業務プロセス改革等の構想策定を行う場合は、全社で部門や個人で様々なやり方をしている業務の全体像を定義して、業務における課題をとらえて構造化し、原因を特定して、解決策を提示するといったことを行います。
そのため、どの程度クライアントの業務のやり方が悪いのかといったことを提示する必要があります。
投入する工数と生産されるアウトプットから生産性の悪さ等を定量的に提示することもできます。
また、一つの方法として、他の企業等と比べてどの程度悪いのかということを定量的に提示することがあります。
その際、基準が一定でなければ比較検討することは困難です。
そこで使われるのが「能力成熟度モデル」です。
今回は「能力成熟度モデル」について紹介してきたいと思います。
コンテンツ
1.成熟度モデルってなに?
先ほど紹介したように、自分の会社の業務の運営の仕方がどの程度のレベルにあるのかといったことを診断・評価するために一般的に使われるものです。
単に、仕事の仕方が効率的ではないとか、無駄が多いといったことでは、個人や部門の仕事の改良・改善にはつながりますが、企業としての根本的な問題の解決には至りません。
それに対して、能力成熟度モデルでは、全社の業務プロセスを構造的に分解して、それぞれの業務プロセスの領域において、業務プロセスの状態を診断・評価するといったことを行います。
- 現状の業務プロセスがどのレベルかを診断する
- 業務プロセスにおいて、(例えば)1年後にどのレベルを実現するかを決定する
- 1年後に目指すレベルを実現するために業務プロセスの何をどう変えるかを定義する
といったことを導き出すために使用します。
コンサルタントとしては、単に診断して評価することで仕事は終わりません。
診断・評価した結果、何をどう直すことで、どれだけ業務を効率化できるのかの効果試算やアクションプランを検討することがコンサルタントには求められます。
2.能力成熟度モデル 基本編
今では能力成熟度モデルは様々な業務プロセスの診断・評価に使われるようなツールになっています。
もともとは、カーネギーメロン大学のソフトウェア工学研究所が軍のシステム開発の業者選定の評価を行うことに端を発し、「CMM(能力成熟度モデル)」として生まれたものです。
その後、改訂を重ねて2012年以降は、カーネギーメロン大学のCMMI研究所(CMMI Institute)で管理されています。
このCMMIが様々な成熟度モデルの基本となっています。
当ブログでは2つのモデルをご紹介します。
CMMIの能力成熟度モデル
CMMIは、現在は4つの領域のモデルがあります。
- CMMI for Development
- CMMI for Acquisition
- CMMI for Service
- People CMM
その一つであるCMMI for Developmentには、4つの区分、9つの能力領域と20のプラクティス領域が定義されています。
全体の構造は以下のようになります。
これに対して5つの成熟度のレベルを設定しています。
CMMIの詳細については、CMMIのサイト(https://cmmiinstitute.com/cmmi-5)を参照してください。
COBITの能力成熟度モデル
COBIT(control objectives for information and related technology)は、情報システムコントロール協会 (ISACA)とITガバナンス協会 (ITGI)が1992年に策定したIT統制に関するフレームワークです。
2005年に、情報システムの領域を4つの領域(ドメイン)と34のITプロセスとして定義し、CSF(Critical Success Factor)、KGI(Key Goal Indicator)、KPI(Key Performance Indicator)と6レベルの成熟度モデルを定義しました。
成熟度レベルは、CMMIと類似していますが、6つのレベルからなります。
COBITの詳細については、ISACAのサイト(https://www.isaca.org/)を参照してください。
3.能力成熟度モデル 応用編
CMMIについても、COBITについても、基本となる対象領域はITの領域です。
ただし、コンサルタントの仕事は情報システム部門だけではありません。
企業全体のバリューチェーンが対象となります。
そのため、成熟度モデルもバリューチェーン毎に様々なものがあります。
<図 バリューチェーンのイメージ図>
例えば、マーケティング・販売の一つに営業があります。
営業と言っても様々な業務プロセス(能力)が組織としては必要となります。
そこで、営業として必要となる業務プロセス(能力)を能力成熟度モデルとしてモデル化します。
また、CMMIやCOBITに準拠するものが多いですが、成熟度を診断するためのレベルの設定を行います。
※バリューチェーンについては、以下の記事も是非読んで下さい
その上で、様々な事業部門に属する営業部門や全国の販売子会社等をヒアリングして、能力成熟度モデルに照らして現状を整理して、能力成熟度レベルで評価します。
こういったことなく、現場ヒアリングを始めてしまうと、種々雑多な個別の課題や不満を聞くこととなり、整理・分析は困難となります。
始めのステップとして、モデル化することはとても重要です。
4.まとめ
企業内で様々に存在する業務プロセスをバリューチェーンとして定義したうえで、構造的に分解・定義し、業務プロセスをモデル化した上で、現状の業務の遂行能力を評価します。
能力を評価する際に重要なことは、「木を見て森を見ず」です。
当然、ファクツとしての事実を現場にヒアリングして集めることは極めて重要です。
また、現場の話を聞く中で新しいファインディング(気づき)も得られます。
しかし、木の枝葉だけを見ていては、根本的な業務プロセスの改善は困難です。
ヒアリングして出てきた現場の話から、業務の全体像をとらえて、課題を構造的にイシューツリーで分解して行くことがコンサルタントの基本として重要です。
課題が構造化できれば、根本原因を導き、解決策を提案することが容易になります。
また、様々な領域の成熟度モデルをポケットに入れておくと、TO-BE業務を設計する際等もとても便利です。
※イシューツリーについては、以下の記事も是非読んでみて下さい
http://mub.co.jp/marketing/issue-tree/