「バリューチェーン(価値連鎖)」について書いていきたいと思います。
・バリューチェーンってどうやって使うの?
ということをもう少し詳しく知りたい人は必見です!
コンサルティングファームを受験するにあたり、意識しておいたほうが良いことの一つに「自分の価値って何か?」ということがあります。
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なぜかというと、コンサルティングファームでは、自分自身が重要な商品になります。
商品には値段がつけられるし、一方で、仕入れるための費用が掛かります。
言い換えれば、コンサルタントへ支払った給与より高い金額でクライアントに買ってもらい、その差額がコンサルティングファームとしての利益になります。
そのためには、コンサルタントとしての本来の付加価値の高い業務に従事しながらも、社会人としてのマナーも身に着け、経費精算等事務処理をきちんと対応することも必要になります。
つまり、コンサルタントとして他のコンサルタントに対して差別化できる能力を持ち、社会人として実施すべき基本的なことをきちんとこなすことができることで、コンサルタントの価値が決まります。
いくらコンサルタントとして優秀でも、コンサルティング以外のことはからきしダメということでは、コンサルタントとしての価値に「?」がついてしまいます。
少なくとも、経営コンサルタントにとっては重要なことです。
このような考え方に近いものが、今回紹介する「バリューチェーン」になります。
※最近はクライアントの社員の方も「バリューチェーン」で通じるし、コンサルティングの現場でも「価値連鎖」よりも「バリューチェーン」の方が馴染みがあるので、「バリューチェーン」を使っていきたいと思います。
では、「バリューチェーン」についてご紹介していきたいと思います。
コンテンツ
1.前提として知っておいてほしいこと
まずバリューチェーンの紹介に入る前に前提として知っておいてほしいことについてご紹介していきます。
バリューシステムとは?
今回紹介するバリューチェーンは、個々の企業の活動を重要な活動に分解して、企業の競争優位の源泉を分析するというフレームワークです。
しかし、このバリューチェーンは、1企業単独で存在するものではなく、その前提として、より大きな様々な会社のバリューチェーンとの関係の中で考えることが必要なことを覚えておいてください。
この自社を取り巻くより大きな活動群を「価値システム」もしくは「バリューシステム」と呼びます。
バリューチェーンはよく耳にするかもしれませんが、価値システムやバリューシステムという言葉はあまりお聞きしたことないかもしれませんね。
例えば、モノをつくる製造業の会社を例に見てみましょう。
川上にいる供給業者は原材料のみを供給することもあれば、その提供の仕方により、自社のやり方つまり自社のバリューチェーンに影響を及ぼすこともあります。
ここでいう川上とは、ある作業工程の前の工程にあたるものを川上と呼んでいます。
また、ある作業工程の後の工程にあたるものを川下と呼んでいます。
バリューシステムの図では、自社のバリューチェーンの左側の工程が川上のバリューチェーン、自社のバリューチェーンの右側が川下のバリューチェーンになります。
また、自社で製造したモノは、流通チャネルのバリューチェーンを通して、買い手に届き、買い手のバリューチェーンに組み込まれていくことになります。
このように、自社が大きなバリューシステムの中でどう差別化できるかは、バリューシステムの中で買い手の会社のバリューチェーンに自社の製品やサービスがどのような役割を果たし、バリューシステム全体の中で自社が適合できているかどうかが重要です。
つまり、競合他社と比べて、バリューシステムの中において自社のバリューチェーンのあり方の違いが競争戦略の違いとなります。
よって、そのバリューチェーンを構成する個々の企業の活動のあり方にこそ、競争優位の源泉が存在することになります。
バリューネットワークとは?
バリューシステムの考え方は、ファイブフォース分析にも似ています。
※ファイブフォース分析については以下の記事を参考にして下さい
そして、バリューシステムに似たものに、バリューネットワークというフレームワークもあります。
バリューネットは、共通した価値を持つお客様と、そのお客様に価値を提供する自社をはじめとする企業群を指します。
このバリューネットワーク自体が企業にとっての生存環境であるため、収益やコストの構造は個々の企業の意志ではなく、この所属するバリューネットに帰属するという考えです。
2.バリューチェーンとは?
それでは、今回の本題であるバリューチェーンについて紹介したいと思います。
下の図に示したものが、ポーター先生の「競争優位の戦略」に登場するバリューチェーンの図になります。
最近は、バリューチェーンについて、バリューシステムやバリューネットワークに近い図のイメージで語っている人も少なくありません。
企業活動の最も大きい単位のプロセスというように理解している人も多いようです。
本来のバリューチェーンは、ある特定の事業単位での企業の主要な活動から構成されます。
顧客に提供する価値を生み出す活動の集合体です。
同じような事業における競合企業間で比較すると、おおよそ似たようなバリューチェーンとなりますが、実際の企業の内部を見てみると当然違いがありますよね。
これらの違いがそれぞれの差別化を生み出す、競争優位の源泉と言えます。
「価値」について
このバリューチェーンでいうところの「バリュー」つまり「価値」とは何でしょうか。
簡単にいうと、自社のお客様が自社のモノやサービスに払ってくれる対価、つまり金額と言えます。
この金額とバリューチェーンの活動に必要となるコストの差がマージン、つまり利益となります。
この利益を大きくすることが重要です。
差別化や競争上の優位性を検討する際、コストに目が行きがちですが、コストだけではなくこのマージンの幅、つまり価値全体に目を向けることが重要です。
「バリューチェーン」の構成要素
このバリューチェーンの構成要素は図で分かるように、
- マージン
- 主活動
- 支援活動
からなります。
例えば、主活動は、製造業であれば、
- 原材料の調達
- 製造・販売
- お客様にお届けする物流
- 販売後のアフターサービス
があります。
また、支援活動は、主活動をささえる技術や人的資源の管理となります。
よく、支援活動に縦の点線を引いていない本などを見かけますが、この縦の点線は個々の主活動と関連してバリューチェーン全体を支援していることを示しています。
このバリューチェーンを構成する個々の活動は、競争優位を実現するためのバラバラの「建築ブロック」とも言われています。
そこで、このバリューチェーンの活動一つ一つのあり方が、当然ながら社内のコストを決めていきます。
一方で、この価値を生む活動の一つ一つのあり方が、買い手であるお客様等への貢献の仕方、つまり差別化の仕方として違いが出てきます。
競合企業とのバリューチェーンとその活動の差を知ることで、どの違いが業界における競争優位の源泉になっているかが分かってきます。
3.バリューチェーンの使い方
このバリューチェーンという言葉は、響きも良くて、分かり易い考え方なので、コンサルティングの現場ではよく使われる言葉ですし、フレームワークでもあります。
クライアントのプロジェクトメンバーの方でも抵抗なく使われている言葉です。
コンサルティングの現場での主な使われ方について少し紹介したいと思います。
ベンチマーク
ポーターが提唱するように、バリューチェーンは、個々の企業の活動を重要な活動に分解して、企業の競争優位の源泉を分析するフレームワークです。
そこで、クライアント企業と競合他社との活動を中心としたベンチマークに活用します。
それぞれの企業のバリューチェーンをモデル化して、一定レベルに分解して、
- それぞれのプロセスにどのような差異があるのか
- 何が競争優位の源泉となっているのか
について比べます。
プロセス自体の差異を中心に、KOPTモデル等のフレームワークをもとにベンチマークをします。
他者のコストや体制・人数等が入手できるケースもありますので、より詳細な内容をベンチマークして差異を突き詰めていきます。
現状業務プロセスの課題分析
経営コンサルタントの仕事の中で最も多いと言っても良い仕事の一つに業務プロセス変革があります。
- クライアント企業の業務プロセスの処理にかかる時間・コスト等の削減し、マージンを上げる
- 活動の仕方を大幅に変えて、競争優位の源泉を確保する
などの施策を検討するものです。
その際のはじめのステップとして実施するのが、現状業務プロセスの課題分析です。
「図 基本的なバリューチェーンの細分化のイメージ」のように、業務プロセスを細分化していき、個々のプロセスの活動毎にどのような課題があるかを整理、分析するような仕事です。
この課題を分解して、構造化して、その原因をあぶりだし、課題の解決策を検討する際に使用します。
あるべき業務プロセスの設計
新しい事業を始めたり、全社での業務プロセスの構造改革を行う際は、個々の業務プロセスを見直したものを積み上げて行っては、現状の課題や業務プロセス間の矛盾をはらんだままの新しい業務プロセスとなってしまいます。
現場主導で行う業務プロセス変革のプロジェクトでは、どうしても全社や他部門、ましてや他社のバリューチェーン等を考慮した設計を行うことがなかなかできません。
すると、どうしても現場ごとの個別最適となった新しい業務プロセスが誕生してしまいます。
しかし、私たち経営コンサルタントは、他社とのバリューチェーン等も考慮しながら、全社の業務プロセスを捉えて、段階的に詳細化しながら、全社最適化され、競争優位性を担保できる業務プロセスを設計します。
4.まとめ
このようにバリューチェーンは業務プロセスを分析したり、新しい業務プロセスを設計したりするときの出発点として、色々な形で応用できるフレームワークです。
クライアントの課題や検証したい仮説に合わせて、色々な方法で活用してみてください。
ただ、誤った理解で使ってしまうとなかなか思ったような成果につながらない場合も少なくありません。
まずは基本となるポーターの提唱するバリューチェーンについて学んでみてください。
非常にページ数の多い大作ですが、得るものは非常に多いと思いますし、お勧めです。
勉強のとっかかりとして、入門書から入るのも良いと思います。