【経営コンサルタントが使うフレームワーク】~EVM~

こんにちは。
「EVM(Earned Value Management)」について書いていきたいと思います。
・プロジェクト管理をもっと定量的に管理しろって言われたけど、どうすれば良いの?
・プロジェクト管理の打ち合わせで、PVとかEVとかACとか出てくるけど、何のことだろう?
ということをもう少し詳しく知りたい人は必見です!

コンサルタントにとって、プロジェクト管理のスキルは基本の基本です。

  • WBSを作成する
  • 日程計画を作成する
  • 課題管理を行う
  • 品質管理を行う
  • 変更管理を行う

など、コンサルティングでの中身の検討と合わせて、プロジェクトのQCDを管理していくことはとても重要な作業です。

特に、全社の業務プロセス設計を行うとか、システム開発のPMOを行うとなると関与する人の人数の多さもさることながら、作業項目やアウトプットの量や種類も非常に増えます。

そのため、その一つ一つの作業の遅れが全体の作業の遅れにつながります。

そこで、定量的にプロジェクトの進捗やコスト等を可視化して、管理できる手法が必要となります。

そのような場合に使われる手法としてEVMというものがあります。

就活している大学生やキャリアチェンジでコンサルタントを目指している人もあまりEVMという名前はなじみが無いかも知れません。

今回は「EVM(Earned Value Management)」について紹介してきたいと思います。

※PMOについては、以下の記事も是非読んでみて下さい

【経営コンサル志望者必見!】コンサルにとっての必須科目のPMOを徹底解説!

1.EVMってなに?

EVMという言葉は、Earned Value Management(アーンド・バリュー・マネージメント)の頭字語です。

プロジェクトを管理する一つの手法です。

EVMを活用することで、プロジェクトの全体の計画や計画に対する現時点での進捗度、現時点での進捗度に基づくプロジェクト完了時点での計画への影響度合いを定量的に可視化することができるようになります。

比較的小規模なプロジェクトであれば、担当している個々の作業の進捗を確認すればある程度の進捗や完了時点の見込みを把握することができますが、大規模なプロジェクトではそういは行きません。

そこでEVMのような手法が必要となります。

1967年に米国防総省の調達規定として C/SCSC (Cost/Schedule Control System Criteria) が規定されました。

その後、変更が加えられ、アメリカ規格協会(ANSI:American National Standards Institute)がEVMSとして発行しました。

PMBOKにも記載され、日本でも経済産業者が「EVM活用型プロジェクト・マネジメント導入ガイドライン」として制定しました。

2.EMVでは何を管理するの?

EVMでは非常に多くの指標を規定し、プロジェクトの進捗や出来高予測を行おうとしております。

そこで、まずは最も重要な3つの基礎指標について説明したいと思います。

3つの基本管理指標

PV(Planned Value):計画出来高

プロジェクトを計画した際に、当初計画した出来高になります。

出来高は価値と言ったりします。

プロジェクトで作成する成果物の要素等で測ります。

全体の計画のパフォーマンスを測る際のベースラインとなる指標です。

EV(Earned Value):実績出来高
達成価値等とも言いますが、現時点(測定時点)までに完了した成果(物)の実績です。

AC(Actual Cost):実績コスト
実際にEVとしての成果(物)を作成するために、消費したコストの実績です。

100を作るのに、100のコストが計画されていて、EVは100で計画通りかもしれませんが、ACはコストが超過して200ということもあります。

そのため、出来高の実績だけではなく、実績コスト(AC)も併せてみる必要があります。

BAC(Budget At Completion):完成時総予算
基本3要素の他に、重要なこととしてBAC、完成時総予算があります。

これは、プロジェクトが完了した場合の総予算になります。

よって、EVは、BACに進捗率を掛け合わせて算出することができます。

図 EVM概要 イメージ図

<図 EVM概要 イメージ図>

その他の重要な管理指標

3つの基本管理指標の他にも、EVMでは管理すべき指標はたくさんありますが、その中でも知っておくと便利な指標を紹介します。

色々ありますが、基本は先ほど紹介した3つの基本管理指標の組み合わせで計算できます。

CV(Cost Variance):コスト差異
成果を上がるためにどの程度のコストを投入したか、その差異を把握します。
CV = EV - AC
つまり、ゼロ以上であれば予算内に収まっているということです。

SV(Schedule Variance):スケジュール差異
計画したPVに対して、実際の出来高との差異を把握します。
SV = EV – PV
つまり、ゼロ以上であれば、予定よりも実績の方が進んでいるということです。

CPI(Cost Performance Index):コスト効率指数
投入したコストに対してどの程度の成果を上げているかを割合で把握します。
CPI = EV ÷ AC
つまり、1以上であれば実績のコストや予算内に収まっているということです。

SPI(Schedule Performance Index):スケジュール効率指数
予定に対して出している成果はどの程度進捗しているかの割合を把握します。。
SPI = EV ÷ PV
つまり、1以上であれば、スケジュールは予定よりも早く進捗しているということです。

EAC(Estimate At Completion):完成時総コスト予測
現状のまま進捗した場合、プロジェクトの完成までにどのくらいのコストになるかを見積もります。
EAC = AC + (BAC – EV) ÷ CPI = AC + ETC

ETC,(Estimate To Completion):残作業コスト予測
現状のまま進捗した場合、現時点からプロジェクト完了時点までに発生するであろう残作業コストを見積ります。
ETC = (BAC – EV) ÷ CPI = EAC – AC

VAC(Variance At Completion):完成時コスト差異
現状のまま進捗した場合、プロジェクトの総予算と最終コストの見積り額の差異を把握します。
VAC = BAC-EAC
つまり、ゼロ以下であれば、コストは予算内に収まっているということです。

3.EVMってそんなに便利なの?

非常にシステマチックで、定量的に把握できるEVMですが、必ずしも万能という訳ではありません。

以下の2点のような場合には、EVMの管理にコストや工数をかけても、得られるメリットは少ないと個人的には思っています。

不確定要素が多いプロジェクト

まさしく、コンサルティングのプロジェクトが該当すると思います。

新規事業の策定や全社の業務構造改革の基本構想を策定するといった場合、作業する内容やおおよそのアウトプットは決めていますが、仮説はあるものの、はじめから正解があるわけではありません。

そのため、定量的に工数や生産性を試算することが困難です。

例えば、肝となるような1ページの資料を作り、クライアントと合意するのに何日も費やすことがあります。

一方で、分析作業のようなものであれば、1時間に数ページの資料にまとめたりすることも可能です。

成果物の生産性やコストが不確定なプロジェクトの管理にはあまり向いていません。

小規模・短期間のプロジェクト

EVMでは、様々な指標を定量化して管理できますが、そのためのデータを確保する工数やコストがかかります。

そのため、少人数や短期間で終わるプロジェクトの場合ですと、管理するためのコストや期間とメリットが見合いません。

そのような場合は、WBSをきちんと作り、日程計画通りに作業が進んでいるかを一つ一つの作業項目ごとに管理する方が合理的と思います。

※ WBSについては、以下の記事も是非読んで下さい

【WBSとは?】基礎知識と作り方、使い方

4.まとめ

EVMは、政府の「情報システムに係る政府調達の基本指針」にも記載されていますが、情報システムの構築に関与する場合は、必須のスキルとなります。

経営コンサルタントも、基本構想等を策定した後にPMOとして情報システム構築の工程管理等にも関与する場合があります。

その際、EVMに関する知識、スキルは必須になります。

経営コンサルタントにとっては馴染みが少し薄いEVMですが、基本をきちんと押さえておくことをお勧めします。

「図解 国際標準プロジェクトマネジメント―PMBOKとEVMS」