「PEST分析」について書いていきたいと思います。
・PESTってなに?
・PEST分析ってどうやって使うの?
SWOT分析などと同様に日頃マーケティングなどの本で読んだりする機会が多いフレームワークで、「ペスト」分析と呼んでいます。
SWOT分析と似ていて、経営コンサルティングの現場では、経営戦略や事業戦略を策定するためという目的では、それほど多く使われているフレームワークではないように思います。
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また、書籍やネットで紹介されている方法とは少し使い方が違うように思います。
今回は「PEST分析」についてご紹介していきたいと思います。
※SWOT分析については以下の記事を参考にして下さい
コンテンツ
1.PEST分析とは?
PEST分析をもともと提唱したのは米国のフィリップ・コトラー(Philip Kotler)です。
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の特別教授で、マーケティングと言えばコトラーというくらいマーケティングの大家なので、知っている方も多いのではないかと思います。
PEST分析は、
- 経営戦略
- 事業戦略
- マーケティング戦略
を策定するための代表的なフレームワークと紹介されていることが多いです。
このPEST分析のPESTは以下の4つの英語の頭文字をとったものです。
<図 PEST分析フレームワーク>
2.PESTとは何か?
それでは、PESTとはそれぞれ何を分析すべきなのか個々に見ていきたいと思います。
P:Politics(政治的要因)
政治に関する要因で、例えば非常に大きなテーマだと英国のEU離脱のブレグジットといった問題など上げられますが、その他政治を取り巻く
- 規制
- 税制
- 関税
などに関する要因も含まれます。
E:Economy(経済的要因)
経済に関する要因で、
- GDPの成長率
- 雇用や失業に関すること
- 賃金動向
- 為替、株価、金利
などをはじめ、業界動向など多様な要素が含まれます。
最近の働き方改革などで紹介される日本の労働生産性の低さなど結構興味深い内容です。
S:Society(社会的要因)
社会に関する要因ですが、社会に関する要因ってすごく幅が広いですよね?
例えば、
- 人口動態
- 世帯構成
- ライフスタイル
- 教育
などが挙げられます。
2021年の東京オリンピックのような社会イベントや社会インフラの整備なども含まれます。
T:Technology(技術的要因)
これは言うまでもなく、技術に関することです。
ITやデジタル技術などは分かりやすいかと思います。
- AI
- ロボット
- バイオテクノロジー
- CASE
など様々な産業に関連する技術が多く挙げられます。
最近流行りのDX(英語のDigital Transformation)なども含まれます。
(個人的には、バズワード的なので、社会的要因のようにも感じています)
3.PEST分析の効果的な使い方
経営コンサルティングの現場でのPEST分析の使われ方は、よく紹介されているような「PESTを調査・整理・分析した結果から、戦略を導き出す」というような使われ方とは異なると思います。
SWOT分析と同様に、多くの場合、PESTに関する情報を整理・分析することで、
- 事業戦略
- マーケティング戦略
などが立案されるような形で利用されていることが多いと思います。
クライアントの方から社内の企画書などを見せていただくこともありますが、事業計画や新規事業の企画書の冒頭に、PEST分析が語られ、そのPEST分析の結果から新たな事業のネタが抽出されているように企画書を作られていることが多いように思います。
しかし、何らかの仮説なしに、幅広くPESTの項目についてマクロ環境を整理・分析した結果から、事業戦略などが導けるようには思えません。
よくある企画書の内容や思考過程は以下のような流れだと思います。
情報収集 → 整理・分析 → 戦略立案
一方、経営コンサルタントは常に、仮説思考をとります。
つまり、あくまで仮説を立案し、その仮説が正しいのか否かを検証するといった手順を取ります。
戦略仮説の立案 → 情報収集 → 整理・分析 → 仮説の検証
という過程の思考だと考えています。
そのため、幅広く、政治、経済、社会、技術、環境に関する情報をマクロ的に分析して、そこから帰納法的に戦略を抽出するようなことは多くの場合行いません。
仮説がないとした場合、いったいどれだけのマクロ環境の情報を収集・分析すれば良いか悩むことになります。
<図 PEST分析活用のフレームワークイメージ>
思考を仮説検証型に変えることで、PEST分析の位置づけも大きく変わると思います。
もちろんPEST分析は優れたフレームワークなので、仮説を検証する際にも様々な視座を与えてくれるフレームワークです。
4.まとめ
PEST分析は、とても優れたフレームワークですが、都合の良いフレームワークという側面もあります。
時々見かけますが、時間がないからか、調べるすべがないからか、手っ取り早く自分の気が付いたような事情や最近話題になっている事象を「PEST」のフレームワークに押し込んでいるような新規事業の企画書があります。
一見それっぽく見えてしまうので、とても危険です。
実際のこのような企画書が承認されて、準備を進めていったところ、「P」の規制をきちんと調査・分析しきれていなかったことから、実現せずに投資が一部無駄になってしまったものを目にしたこともあります。
フレームワークは「諸刃の剣」です。
使い方を違えると、自分の会社や自分自身を傷つけてしまうことになります。
PEST分析に限らずですが、フレームワークを使う際には、使う十分に使い方を検討してください。