「ナレッジマネジメントとSECIモデル」について書いていきたいと思います。
・コンサルファームで蓄積している知的資産はどうやって再利用するの?
高校の歴史の授業とか学んだ方が多いと思いますが、かつて中国やドイツでは焚書(ふんしょ)がありました。
思想等の弾圧のために、本等を焼くことですね。
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今ではインターネット上で過去のモノも含めて様々な情報にアクセスできるようになっており、焚書自体が持つ意味が薄くなっていると思います。
しかし、書籍等紙の媒体だけが知識等を伝える唯一の手段であった時代に焚書が与える影響は知の伝承という意味で非常に大きな意味を持ちました。
大げさに聞こえるかもしれませんが、コンサルティングファームにおいて知の伝承はビジネスの根幹にも影響を及ぼす重要なものです。
焚書は当然起きませんが、一つ一つのプロジェクトでのナレッジの蓄積が、コンサルティングファームの競争力の源泉になると言っても過言ではありません。
それを支えるのがナレッジマネジメントで、その基本的なモデルがSECIモデルです。
今回は「ナレッジマネジメントとSECIモデル」について紹介してきたいと思います。
コンテンツ
1.コンサルティングファームにとってのナレッジとは?
コンサルティングファームにとってのナレッジは、まさしく競争力の源泉です。
文字の発明が文明の発達とも関係が深いように、過去からのナレッジはコンサルティングファームにとっての生命線とも言えます。
その為、ナレッジマネジメントの仕組みを入れて過去のナレッジを蓄積しています。
コンサルティングファームでは以下のようなナレッジを継続して蓄積してることが多いです。
- 過去のプロジェクトのアウトプット
- 独自の方法論
- 過去のプロジェクトで開発されたフレームワーク
詳細をみていきましょう。
過去のプロジェクトのアウトプット
これはクライアントとの活動でコンサルタントが作成したすべてのアウトプットを指します。
提案書や報告書だけあればいいのではと思うかもしれませんが、提案書から報告書ができあがるまでの全てのセッションの資料を蓄積することで、先人の「Thought Process(思考の過程)」を追うことができます。
下手な方法論を学ぶより、過去の著名なプロジェクトの「Thought Process」から学ぶものの方が有益な場合が多いです。
独自の方法論
各コンサルティングファームでは、「新規事業開発」「DX戦略策定」「業務プロセス構造改革」等主要なコンサルティングのテーマ毎に、独自の方法論が整備されています。
方法論には、検討するためのアプローチ、各タスクの検討ポイントや検討手順、使用する標準テンプレート等が定義されています。
この通りに実行すれば誰でも同じ答えが導けるのかというと、そうはいきません。
クライアントのイシューに応じて内容を見直したりとコンサルタントのスキルに依存する部分が多いですが、活動のベースラインとなるものです。
過去のプロジェクトで開発されたフレームワーク
方法論等をベースにプロジェクトが実施され、その成果物が溜まっていきます。
個々のプロジェクトでは、クライアントのイシューを踏まえて、様々な独自のフレームワークを開発しています。
この独自のフレームワークは実践で作成されたものなので、類似のイシューのプロジェクトで活用することが可能です。
また、再利用されたフレームワークが進化することで、より活用の幅が広くがっていきます。
※コンサルタントの仕事の進め方について紹介した以下の記事も是非読んでみて下さい
2.SECIモデルって何?
このような知的資産を管理するナレッジマネジメントですが、その基本的なモデルとなるのがSECI(セキ)モデルです。
SECIモデルは、野中郁次郎教授(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)が提唱した、ナレッジマネジメントのモデルです。
個人が個々に持つ知識を組織的に共有し、高度な知識に昇華させる考え方で、以下のSECIの4つのステップからなるプロセスです。
- 共同化(Socialization):組織内の個人や小グループが暗黙知を共有したり、それらをもとに新たな暗黙知を創造すること
- 表出化(Externalization):各個人、小グループが有する暗黙知を形式知として抽出・整備すること
- 結合化(Combination):抽出された形式知を組み合わせ、それを基に新たな知識を創造すること
- 内面化(Internalization):新たに創造された知識を組織に広め、新たな暗黙知として習得すること
3.ナレッジはどこで活用される?
コンサルティングファームでのナレッジの蓄積と活用について紹介しましたが、コンサルティング以外でのナレッジマネジメントの活用について3点ご紹介します。
リスクマネジメント
ナレッジは言うまでもなく、どのような場面でも活用することができますが、有効なものとしてリスクマネジメントの領域があります。
リスクとは、将来起こるかもしれない不確定な事象を指します。
一般には危険なこと悪いことというイメージが強いと思います。
よくリスクマネジメントと言いますが、将来起こるかもしれないことに対して、起こった場合の対策を事前に講じることで、その影響度を最小限にしようという考え方です。
そのため、リスクに関する以下のような情報を蓄積することで、リスクマネジメント力を向上させることができます。
- 発生しうるリスク(事象)
- リスクに対する対応策
- 実際に起こったリスク
- 実際に起こったリスクの頻度と影響度
- 実際に取られた対策と対策の有効性
リスクマネジメントはビジネスの基本なので、プロジェクト型の仕事をはじめ様々なビジネスシーンで活用することが可能です。
※リスクについては、以下の記事も是非読んで下さい
匠の技
段々と経験を積んだ匠の数が少なくなり、匠の技を継承することが難しくなっていると言われています。
匠の技自体を文書化して、ナレッジとして蓄積・継承することが従来からは行われていました。
現在では、センサー等がインターネットに接続され、様々なデータが収集・蓄積・分析できる状態にあります。
よく目にするIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の活用です。
そこで蓄積されたデータを活用することで、匠の技をAI等を活用し、形式知化して再現するというものです。
匠のノウハウをデータ化して、蓄積し、各種データから匠の技を再現します。
そこには、データのモデルやデータ分析のモデル等のナレッジの蓄積が無ければ実現できません。
以下のような匠の技をIoTやAIも活用し、形式化・モデル化しています。
- トンネルや橋梁の打音点検
- クルマの塗装工程の水研ぎ
- 金型の製作 等
営業ノウハウ
できる営業の人は、少ない顧客を訪問することで、効率的に営業目標を達成できます。
一方で、できない営業の人は、頻繁に多くの顧客を訪問しますが、中々営業目標を達成することができません。
一般的には、以下のような要素が大きく異なります。
- 訪問する顧客のターゲティングの違い
- 訪問するタイミングの違い
- 訪問時に提供する情報の違い
- 訪問する顧客に提案する商材の違い
結果として、以下のような営業目標達成の状況に違いが出てきます。
<図 営業目標達成状況の違い イメージ図>
できる営業の持つノウハウを形式知化し、組織内で共有し、組織全体の営業スキルを上げるという取り組みが良くなされています。
最近ですと、こういった領域にも、できる営業の暗黙知の形式知化等にビッグデータやAIが活用されています。
4.まとめ
コンサルティングファームに関わらず、暗黙知の形式知化はとても重要な取り組みです。
SECIモデルのような基本的な考え方を活用することで、様々な業種・業務にナレッジマネジメントの仕組みを導入することができるようになります。
ナレッジの蓄積・活用を検討する際に是非参考にして下さい。