「コンプライアンス遵守!経営コンサルの勤怠管理の重要性」について書いていきたいと思います。
・年俸制だと残業代は支給されないの?
・年俸制だと休日出勤とか付けても意味ないの?
ということをもう少し詳しく知りたい人は必見です!
コンサルティングファームの社員は経営のプロフェッショナルというように思われていますが、経営コンサルタントは大抵それぞれの専門領域を持っています。
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マーケティングとか営業やSCM(サプライチェーンマネジメント)、経営管理、事業戦略などです。
全ての経営コンサルタントが万能にどんなことでもできるというわけではありません。
また、最近ではより特定の領域に対して高い専門性がクライアントからも求められています。
色々な領域のコンサルティングを経験して、スキルの幅を広げていろいろなテーマでコンサルティングができるようになるのは理想です。
そんな経営コンサルタントでも結構弱い領域が、人事管理や労務管理をはじめ会社内の管理の仕組みについてです。
人事や労務等を専門にしているコンサルタントは別にして、「紺屋の白袴」といったところでしょうか。
当然、言葉の意味はそれなりに分かっている人がほとんどですが、実際の職場での運用という点では細かいルールを理解していない人も多いように思います。
今回は「コンプライアンス遵守!経営コンサルの勤怠管理の重要性」について紹介してきたいと思います。
コンテンツ
1.コンサルファームでの勤怠管理について
大抵のコンサルティングファームでは、クライアントのオフィスなど自社のオフィスの外で働くことが多いので、コンサルタント個々人の勤怠を毎日管理することはありません。
しかし、一般の会社では、勤怠管理と言って労働時間の管理をしなければなりません。
それは、労働時間を正確に把握し、適正な給与を支払うという点で会社にとっても従業員にとってもとても重要なことです。
また、長時間労働など過重労働を避け、働き方を見直す上でも、自分自身を守る上でもとても重要です。
- 毎日正確に勤務の始業時刻、終業時刻を記録する
- 始業・終業時刻は、使用者が自ら現認することにより確認し、記録するか、タイムカードやICカードなど客観的に記録・確認できるようにする
- 自己申告の場合は、労働時間を管理することの重要性をきちんと説明する
- 労働時間の記録に関する書類は3年間保管する
など、実施のためのルールが決まっています。
労働時間の管理については、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(https://www.mhlw.go.jp/houdou/0104/h0406-6.html)を参照してください。
2.みなし労働時間制とは?
先に紹介したように、経営コンサルタントの場合は、クライアントのオフィスなど自社のオフィスの外で働くことがほとんどです。
また、クライアント先に常駐する際には、勤務時間もクライアント企業のルールに合わせることがほとんどですし、製造業のクライアントの場合だと土日以外の国民の祝日は出勤するケースも少なくありません。
よって、経営コンサルタントの一人ひとりの勤怠を状況に合わせて使用者(管理職の人等)が勤務時間を管理することは困難です。
そこで、コンサルティングファームでは大抵の場合、「事業場外労働のみなし労働時間制」という制度を取り入れています。
この事業場外労働のみなし労働時間制は労働基準法第38条の2に決められている制度です。
労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間にかかる算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなす
以下のような場合に適用することができる制度です。
- 事業場外(会社の外)で業務に従事
- 会社の指揮監督が及ばない
- 労働時間を算定することが難しい
事業場外労働のみなし労働時間制については、厚生労働省東京労働局の「『事業場外労働に関するみなし労働時間制』の適正な運用のために」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/jigyougairoudou.pdf)を参照してください。
例えば、毎日10時間働いたことにした見直しの労働時間をおとに残業代をあらかじめ計算・参入した金額で年俸額を決めたりしています。
3.勤怠管理と給与の関係
この事業場外労働のみなし労働時間制や年俸制などの給料の制度を正しく理解していないために、「うちは年俸制だから働かなくても、いくら残業しても給料変わらない。」と誤解していることがよくあります。
よくあるのは、うちの会社は見直し労働時間制で年俸制をとっているため、
- 実際の勤務時間を管理する必要はない
- 残業代を支払う必要はない
- 深夜・休日労働の割増賃金も支払う必要はない
などの誤解です。
当然設定しているみなし労働時間を超えれば残業代は払わなければなりませんし、深夜残業や休日労働には割増賃金を払わなければなりません。
「うちの会社の就業規則にはそんなこと書いてないよ」という人もいますが、労働条件の優先順位は以下のように決まっています。
- 法令(労働基準法等)
- 使用者と労働組合で取り決める労働協約
- 会社が定める就業規則
- 採用時などに結ぶ労働契約
たとえ就業規則に書かれていても、労働基準法に反する内容であれば、違法ということなります。
また、上司として管理する立場になる人は、使用者ということで、法令に違反するとあなた個人に罰金が課せられたりすることがあることをきちんと理解しておくことが必要です。
つまり、事業場外労働のみなし労働時間制や年俸制を取り入れていても、正しく労働時間を管理する必要があるのです。
4.労働時間を管理する理由
コンサルティングファームでは、事業場外労働のみなし労働時間制や年俸制を取り入れていても労働時間の管理をしています。
コンサルティングファームでは、以下の3つの観点から労働時間の管理の仕組みを入れています。
- 実労働時間の管理
- 原価計算・原価管理
- コンサルタントの稼働率管理
それぞれ詳細についてみていきましょう。
実労働時間の管理
先に述べたように、事業場外労働のみなし労働時間制や年俸制を取り入れていても労働時間の管理は必須です。
原価計算・原価管理
コンサルティングファームでは大抵、原価管理としてプロジェクト会計をとっています。
クライアントの案件(プロジェクト)毎に、コンサルタントが何時間働いたかが直接労務費にあたります。
そのため、プロジェクト単位に正確な労務時間を把握することが大前提となります。
ビジネスインテグリティという観点でもとても重要です。
コンサルタントの稼働率管理
コンサルタントの業績評価の指標の一つに有償稼働率というものがあります。
クライアントの案件毎に、何時間働いたかを管理し、有償で働いている時間の比率を管理するのです。
これも、正確に記録されないと、一生懸命働いても評価がされないという悲劇につながります。
※コンサルタントの稼働時間の管理については以下の記事も参考にしてみて下さい
5.労働時間を正しく申告しよう
それでも、問題は起こるのです。
業界でいうところの「キャッピング」です。
クライアントに提案している報酬額のベースは原価に基づいていますが、その原価のほとんどはコンサルタントの労働時間に基づく直接労務費です。
例えば、一か月160時間の労働を想定して報酬額を計算したとします。
しかし、仕事が大変で一か月200時間働いしまったらどうなるでしょうか。
40時間分つまりコストが125%となり、25%のコストが想定よりオーバーしてしまいます。
プロジェクトを管理する責任者としてはプロジェクトが赤字になってしまいます。
そこで、よく起こるのが「うちは年俸制だし残業時間つけても変わらないから」ということで、一か月の労働時間の申告を160時間に押さえてしまうのです。
160時間と上限を設定して、「ふた」をすることから帽子をかぶせることになぞらえて「キャッピング」と言っているとようです。
これは労働基準法という観点からコンプライアンス違反ですし、正しい数字を申告しないという観点でビジネスインテグリティにも反しています。
先にも紹介しましたが、法律を正しく知っていようといまいと、法律に違反した場合、指示した責任者(使用者)は個人が罰せられる可能性があるということをきちんと理解することが重要です。
きちんとした労働時間の管理、正確な給与計算は会社の生命線です。
6.まとめ
普段何気なく対応していることが法律に反しるなんてこともあり得ます。
また、当然もらえたはずの権利を失っているなんていうことも起こっているかもしれません。
指示を出す側のコンサルタントの人も、指示を出される若手のコンサルタントの人も、法律や会社のルールをきちんと理解することは何よりも重要です。