「3つの基本戦略」について書いていきたいと思います。
・3つの基本戦略ってなに?
・3つの基本戦略ってどう使うの?
フレームワークの中でも王道ともいえる戦略について考えていきたいと思います。
コンサルティング会社への就職志望者やコンサルタントになりたい人と話をすると、「コンサルタントの仕事」=「戦略を策定する」みたいなイメージを持っている人も多いようです。
そういうイメージに惹かれて経営コンサルタントになりたい人も多くいます。
ただ、ここでいう“戦略“という言葉は、あいまいというか都合の良い言葉です。
結構、コンサルタントの中にも、「戦略」「戦略」と連呼する人もいますが、きちんと「戦略」という言葉を意識しないで使っている人も多かったりします。
今回は、この「戦略」という言葉に対して、経営戦略としての基本戦略を定義したマイケル・ポーターの「3つの基本戦略」を紹介したいと思います。
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1.戦略とは何か?
戦略という言葉は、色々な場面で使われますよね。
もともとも、戦争から来ている言葉なので、競争が発生する場面では必ず出てきます。
コンサルティングファームのオフィスでも、仕事が上手くいっていないと、「どういう戦略で仕事進めようとちゃんと考えているのか!」とか怒っている人は時々いますが、ちょっと意味が違うような気もします。
様々な大学の先生が戦略について定義していますが、伊丹先生が定義している「「企業や事業の将来のあるべき姿とそこに至るまでの変革のシナリオ」を描いた設計図」というのが分かりやすいのではないかと思っています。
つまり、経営戦略とは、
- どのような商品/サービスをどのようなお客様/市場に対して提供していき、
- それをどのように実現していくのか、
つまりヒト・モノ・カネといったリソースをどう投入し、 - どのように持続的な仕組みを構築していくのか
と考えられると思っています。
戦略に対して、“戦術“という言葉も使われます。
戦術は戦略を実現するための個別具体的な計画、いわゆる実行計画といわれるものです。
WBS(Work Breakdown Structureの略)というような計画を策定し、
- いつ
- だれが
- どこで
- どのように戦うのか
- その戦いのために何が必要なのか
など5W2Hを明確にします。
この戦略ですが、一言で戦略と言っても色々な戦略があります。
企業全体の戦略を定めた経営戦略にはじまり、事業毎の事業戦略等が主たる戦略です。
もちろん、一つの事業のみを行っている会社にとっては「経営戦略」≒「事業戦略」と言えるでしょう。
また、業務の機能単位の戦略もあります。
これを、機能別戦略と言います。
よく聞かれるものとしては、
- マーケティング戦略
- 営業戦略
- 財務戦略
- 人材戦略等
などがあります。
2. 3つの基本戦略とは?
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戦略を考える上での基本の基本となる戦略がポーターが言う「3つの基本戦略」です。
ポーターは、「3つの基本戦略」を検討する上で、以下の2つの大きな軸を設定しています。
- 競争優位性(Strategic Advantage)
- 戦略的ターゲット(Strategic Target)
競争優位性は、「顧客に認知されるユニークさ」と「低コストポジション」から構成されます。
戦略的ターゲットは、「業界全体」と「特定セグメント」から構成されます。
この4つの要素より、2×2のフレームを作成しています。
上の図にあるように、3つの競争戦略は、以下になります。
・差別化戦略
・コストリーダーシップ戦略
・集中戦略
この3つについて詳しくみていきましょう。
差別化戦略
提供する製品やサービスにおいて、他社とは明らかに違うユニークさを持つという戦略です。
- 顧客サービス
- 製品の機能・品質
- ブランドイメージ
など他社と差別化する上で重要な要素です。
例えば、自動車業界では、メルセデス・ベンツやBMW等は世界中の市場で、「高級車」という特異なブランドイメージを築いている自動車会社と言えます。
コストリーダーシップ戦略
これは言うまでもなく、徹底的に他社よりも低いコストで他社に勝つという戦略です。
この低コストは、
- 大量生産
- 大量仕入れ
による規模の経済によるコストダウンもありますし、経験曲線効果により、他社には真似できない方法でコストダウンすることもありますね。
例えば、自動車業界では、一概には言いにくいですが、トヨタ自動車が挙げられます。
規模の経済や経験曲線を最大限活用してコストリーダーシップを実現していると言えます。
経験曲線効果:経験値が増えてノウハウが蓄積されることで、製品1つあたりの平均費用が下がる状況のこと。
集中戦略
市場全体を捉えるのではなく、特定の顧客や製品、地域などにリソース(ヒト・モノ・カネ)を集中して競争する戦略です。
ポーターが定義している「集中」戦略は以下の図のように2つに分かれます。
例えば、自動車業界では、セグメントを限定してユニークさを追求している代表格としてフェラーリやマクラーレンといった高級スポーツカーブランドが挙げられます。
車種も少なく、明らかに特定の顧客のみを対象としていますよね?
逆に低コストポジションで特定セグメントを狙っているのは、日本の軽自動車メーカーと言えます。
軽自動車は日本固有の車なので、地域限定です。
日本市場に低価格のクルマを提供していくという戦略と言えるでしょう。
3.3つの基本戦略の使い方
3つの基本戦略は、既存の企業の戦略を分析するには、非常に分かりやすいフレームワークです。
先ほどご紹介したような自動車業界の各社の戦略などは分かりやすい例ですよね?
一方で、このフレームワークを見ていても、戦略がひらめくというものではありません。
他のフレームワークと同様で、使いこなすには、まずは検討する戦略の仮説がなければなりません。
その上で、フレームワークを使って、戦略の仮説の有効性や弱点を整理して、仮説としての戦略を検証・見直すという使い方が有効です。
自社のとるべき戦略のターゲットは全方位に市場をみるのか、セグメントを絞るのか、絞るべきセグメントはどこか、といった形で仮説を検証していきます。
また、この「3つの基本戦略」は一見MECEに見えますが、それぞれが完全に独立して存在する戦略ではありません。
例えば、先のトヨタ自動車のハイブリッド自動車は、今となってはかなり一般的にはなってきていますが、ハイブリッド自動車という特異な機能を持つ車を相対的に低いコストでポジショニングしています。
現実的な価格、コストでハイブリッド自動車を製造・販売できない会社は、クリーンディーゼルなど違う技術戦略をとったり、ハイブリッドの仕組みを供給してもらうようなアライアンス戦略をとったりと様々ですね。
よって、差別化戦略やコストリーダーシップ戦略、集中戦略のそれぞれの基本戦略の要素に固執したり囚われたりしすぎず、様々な可能性を議論すべきだと思います。
4.まとめ
少し捉えどころのない「戦略」という言葉ではありますが、この戦略を一つ間違うと、企業の命運を左右してしまいます。
例えば、1989年の世界時価総額ランキングTOP50社に日本企業は32社がランクインしておりましたが、2018年時点の世界時価総額ランキングTOP50にはトヨタ自動車が残っているのみになりました。
(「週刊ダイヤモンド」2018年8月25日号参照)
経済環境の変化など様々な要因の影響がありますが、多くの日本企業において、環境の変化に応じた戦略の見直し、立て直しが機能しなかったと言えるのではないでしょうか。
とても重要なところなので、しっかり理解を深めていきましょう。